所得税 増税 2027について調べると、「2027年から所得税が1%増税される」「会社員の手取りが大きく減る」といった情報を目にすることがあります。しかし、2026年8月時点で成立している税制改正を正確に確認すると、2027年(令和9年)から所得税の基本税率が一律に1%引き上げられるわけではありません。大きなポイントとなるのは、防衛力強化の財源を確保するために新設される「防衛特別所得税」と、同時に税率が引き下げられる「復興特別所得税」です。
所得税 増税 2027を正しく理解するには、通常の所得税率、防衛特別所得税、復興特別所得税、基礎控除、給与所得控除をそれぞれ分けて考える必要があります。さらに、2027年分からは極めて高い所得に対する負担の見直しも予定されているため、一般的な会社員と高所得者では影響の内容が異なります。この記事では、2027年の所得税制度について、変更点、計算の仕組み、会社員・年金受給者・個人事業主・高所得者への影響まで詳しく解説します。
2027年の所得税は何が変わるのか
2027年1月から特に注目されるのが、防衛特別所得税の創設です。
財務省の税制改正では、所得税額に対して1%の税率をかける新たな付加税として、防衛特別所得税を設けることが決定されています。課税期間は2027年(令和9年)1月からとされています。
一方、現在の復興特別所得税については、税率が2.1%から1.1%へ引き下げられます。
つまり、2027年以降の主な変更は次のようになります。
| 項目 | 2026年まで | 2027年以降 |
|---|---|---|
| 通常の所得税 | 基本税率を適用 | 基本税率そのものは一律引上げではない |
| 復興特別所得税 | 所得税額の2.1% | 所得税額の1.1% |
| 防衛特別所得税 | なし | 所得税額の1% |
| 付加税の合計 | 2.1% | 原則2.1% |
| 基礎控除 | 2026・2027年分で見直し | 2027年分も見直し後の制度 |
| 給与所得控除 | 最低保障額65万円から69万円へ | 69万円を基本に適用 |
このため、「防衛特別所得税が1%追加されるから、そのまま税負担が1%増える」という単純な仕組みではありません。
防衛特別所得税とは何か
防衛特別所得税は、防衛力強化に必要な財源を安定的に確保するために創設された新しい付加税です。
計算の基本的な考え方は、
基準所得税額 × 1% = 防衛特別所得税額
です。
財務省によると、防衛特別所得税の課税期間は令和9年以後の当分の間とされています。また、申告・納付や源泉徴収などについては、復興特別所得税と同様の仕組みが基本となります。
ここで重要なのは、「所得そのもの」に1%をかけるのではなく、「所得税額」を基準に計算する点です。
例えば、単純化して所得税額が10万円だった場合、防衛特別所得税は、
10万円 × 1% = 1,000円
となります。
したがって、「年収500万円なら500万円の1%、つまり5万円が防衛税になる」という計算ではありません。
復興特別所得税は2.1%から1.1%へ
防衛特別所得税の新設と同時に、復興特別所得税の税率は引き下げられます。
現在の復興特別所得税は、基準所得税額に2.1%を乗じて計算します。2027年分以後は、この税率が1.1%になります。
一方で、東日本大震災からの復旧・復興に必要な財源を確保するため、課税期間は延長されます。
財務省は、復興特別所得税の課税期間を令和29年まで延長することを示しています。つまり、税率を引き下げる一方で、復興財源を確保するため期間を延長する仕組みです。
2026年と2027年の違い
非常に単純化すると、所得税額に対する付加税部分は次のように変化します。
| 税目 | 2026年 | 2027年以降 |
|---|---|---|
| 復興特別所得税 | 2.1% | 1.1% |
| 防衛特別所得税 | 0% | 1.0% |
| 合計 | 2.1% | 2.1% |
そのため、付加税だけを見ると、2.1%から3.1%へ単純に増えるわけではありません。
この点が、2027年の税制を理解するうえで最も重要なポイントの一つです。
所得税の基本税率が1%上がるわけではない
所得税は、所得が高くなるほど税率が高くなる超過累進税率が基本となっています。
したがって、2027年の防衛特別所得税を「所得税の基本税率が1%上がる」と表現するのは正確ではありません。
2027年の制度変更は、通常の所得税率表そのものを一律に1%上乗せするものではなく、所得税額を基準として別途付加税を計算する仕組みです。
この違いを整理すると、次のようになります。
- 通常の所得税を計算する
- その所得税額を基準として復興特別所得税を計算する
- 2027年分から防衛特別所得税も計算する
- 結果として、復興特別所得税と防衛特別所得税を合わせた税率は原則2.1%となる
このため、「2027年から所得税率が一律1%アップ」という理解には注意が必要です。
基礎控除は2027年の負担を考える重要なポイント
2027年の所得税を考える際、防衛特別所得税だけを見ると全体像を見失ってしまいます。
2026年度税制改正では、物価上昇に対応するため、基礎控除と給与所得控除の見直しも行われました。
財務省によると、合計所得金額が2,350万円以下の人について、基礎控除の本則部分は58万円から62万円へ4万円引き上げられます。また、給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円へ引き上げられます。
この改正は2026年分以後の所得税に適用され、給与や公的年金等の源泉徴収については2027年1月1日以後に支払うものから適用されます。
つまり、2027年の給与明細を考えるときには、「防衛特別所得税」という負担要素だけでなく、「基礎控除・給与所得控除が拡充されたこと」も合わせて考える必要があります。
2027年の基礎控除はいくらになるのか
国税庁の情報を見ると、2027年分以後の基礎控除は所得水準によって異なります。
基本的な基礎控除は、合計所得金額2,350万円以下の場合62万円となります。さらに、所得水準が低い層については特例による加算があります。
主な仕組みを整理すると次のようになります。
| 合計所得金額 | 2027年分の基礎控除の基本部分 |
|---|---|
| 2,350万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
ただし、低所得者層については別途加算される特例があるため、上表の数字だけで実際の控除額を判断することはできません。
財務省は、2028年分以後も物価上昇に応じて基礎控除等を見直す仕組みを設けています。これは、物価が上昇すると控除額の実質的な価値が低下し、結果として実質的な税負担が増える問題に対応するものです。
給与所得控除も69万円へ
会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者にとって重要なのが給与所得控除です。
2026年度税制改正では、給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円へ引き上げられました。
これは、「給与収入から69万円をそのまま差し引けば所得税がゼロになる」という意味ではありません。
給与所得控除は、給与収入から給与所得を計算するときに使われる控除です。その後、給与所得から基礎控除、社会保険料控除、扶養控除などの所得控除を差し引き、課税所得を求めます。
したがって、2027年の所得税を計算する場合は、単純に年収だけを見るのではなく、所得控除を含めた全体の計算が必要です。
会社員の手取りはどう変わるのか
会社員の場合、防衛特別所得税は給与から源泉徴収される所得税と関係します。
ただし、実際の手取り額は、
- 給与収入
- 給与所得控除
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- その他の所得控除
- 税額控除
- 所得税
- 復興特別所得税
- 防衛特別所得税
- 住民税
- 社会保険料
などによって変わります。
そのため、「2027年から防衛特別所得税が始まるので、全員の手取りが同じ割合で減る」と考えることも適切ではありません。
特に基礎控除や給与所得控除の拡充があるため、所得水準や家族構成によって影響は異なります。
年収別に見るときの注意点
「年収300万円ならいくら増税されるのか」「年収500万円ならどうなるのか」「年収700万円なら手取りはいくら減るのか」といった比較は非常に分かりやすい一方、年収だけから正確な税額を判断することはできません。
例えば同じ年収500万円でも、
- 独身
- 配偶者がいる
- 子どもがいる
- 扶養親族がいる
- 社会保険料が異なる
- 住宅ローン控除がある
- 医療費控除がある
- 副業所得がある
などによって最終的な所得税額は変わります。
したがって、年収別シミュレーションを行う場合には、一定の条件を設定して比較する必要があります。
高所得者には別の所得税負担もある
2027年の所得税改正では、防衛特別所得税だけでなく、極めて高い水準の所得に対する負担の見直しも重要です。
2026年度税制改正では、極めて高い所得に対する負担の適正化措置について、追加負担を計算する際の基準となる金額を見直し、特別控除額を3億3,000万円から1億6,500万円へ引き下げ、税率を22.5%から30%へ引き上げることとされています。
この改正は2027年分の所得税から適用されます。
ここは一般的な会社員の所得税とは別に考える必要があります。
特に、
- 給与所得が非常に大きい人
- 事業所得が大きい人
- 株式等の譲渡所得が大きい人
- 土地・建物の譲渡所得が大きい人
- 複数の所得を合算すると非常に高額になる人
などでは、2027年の税負担を考える際に重要な改正となります。
個人事業主・フリーランスへの影響
個人事業主やフリーランスの場合も、防衛特別所得税は所得税額を基準に計算されます。
そのため、売上そのものに1%をかけるわけではありません。
例えば売上が1,000万円あっても、必要経費が500万円、各種控除が適用される場合には、課税所得や所得税額は1,000万円とは大きく異なります。
個人事業主の場合には、
- 売上を計算する
- 必要経費を差し引く
- 所得を計算する
- 青色申告特別控除などを反映する
- 所得控除を差し引く
- 課税所得を計算する
- 所得税額を算出する
- 防衛特別所得税・復興特別所得税を計算する
という流れで考える必要があります。
2027年の税制を理解するための重要ポイント
2027年の所得税については、次の点を押さえておくと制度全体を理解しやすくなります。
1. 防衛特別所得税は1%
防衛特別所得税は、所得そのものではなく、基準所得税額に1%を乗じて計算します。
2. 復興特別所得税は1.1%へ
復興特別所得税は、現在の2.1%から1.1%へ引き下げられます。
3. 付加税率を単純に3.1%と考えない
防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%を合わせると2.1%です。
したがって、従来の復興特別所得税2.1%から、付加税部分が単純に1%増えるわけではありません。
4. 基礎控除は引き上げられる
合計所得金額2,350万円以下の人について、基礎控除の本則部分は62万円となります。
5. 給与所得控除も見直される
給与所得控除の最低保障額は69万円へ引き上げられます。
6. 高所得者には別の負担増がある
極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置は、2027年分から強化されます。
「2027年から1%増税」という表現が分かりにくい理由
「2027年所得税1%増税」という表現は、防衛特別所得税の税率が1%であることから生まれたものと考えられます。
しかし、実際の制度はもっと複雑です。
通常の所得税に1%を単純加算するのではなく、防衛特別所得税という別の付加税を所得税額を基準に計算します。
さらに、復興特別所得税は同時に2.1%から1.1%へ引き下げられます。
したがって、2027年の制度を正確に表現するなら、
「所得税額に対する1%の防衛特別所得税が新設される一方、復興特別所得税は1.1%へ引き下げられる」
という説明が適切です。
2027年の所得税を考える際に確認したい項目
実際に自分の税負担がどう変わるのかを確認する場合には、次の項目を順番に確認すると制度を整理しやすくなります。
- 年間の給与収入または事業収入
- 給与所得控除または必要経費
- 合計所得金額
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 配偶者控除・扶養控除
- その他の所得控除
- 課税所得
- 所得税額
- 復興特別所得税
- 防衛特別所得税
- 税額控除
- 住民税
- 社会保険料
国税庁も2026年度税制改正に伴う基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得要件などについて案内しています。
2026年と2027年を比較したポイント
最後に、重要な変更をまとめると次のようになります。
| 比較項目 | 2026年 | 2027年 |
|---|---|---|
| 所得税の基本税率 | 基本税率を適用 | 基本税率そのものの一律1%引上げではない |
| 防衛特別所得税 | なし | 所得税額の1% |
| 復興特別所得税 | 2.1% | 1.1% |
| 防衛+復興 | 2.1% | 原則2.1% |
| 基礎控除の本則 | 58万円から62万円へ改正 | 62万円を基本に適用 |
| 給与所得控除最低保障額 | 69万円へ改正 | 69万円を基本に適用 |
| 高所得者への負担適正化 | 従来制度 | 2027年分から強化 |
なお、税制は法令改正や今後の税制改正によって変更される可能性があるため、実際の申告や給与計算では、その年の国税庁・財務省の最新資料を確認することが重要です。
まとめ:所得税 増税 2027を正しく理解する
所得税 増税 2027について最も重要なのは、「2027年から所得税率が一律1%上がる」という理解だけでは制度の実態を正確に捉えられないということです。2027年からは防衛特別所得税が所得税額の1%として新設されますが、同時に復興特別所得税は2.1%から1.1%へ引き下げられるため、両方を合わせた付加税率は原則として2.1%になります。
また、2027年の所得税を考える際には、防衛特別所得税だけでなく、基礎控除の引き上げ、給与所得控除の最低保障額の引き上げ、物価連動型の控除見直しなども重要です。さらに、極めて高い所得に対する負担の適正化措置は2027年分から強化されるため、一般的な会社員と高所得者では税制変更の影響が大きく異なります。
したがって、所得税 増税 2027を判断するときは、「1%増税」という数字だけを見るのではなく、所得税本体、防衛特別所得税、復興特別所得税、基礎控除、給与所得控除、そして所得水準ごとの特例をまとめて確認することが大切です。