株主総会決議事項 一覧 : 会社の重要事項を決定する最高機関

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目次

株式会社における最高意思決定機関である株主総会は、会社の経営において極めて重要な役割を担っています。本記事では、株主総会決議事項について、その種類、決議方法、そして実務上の注意点まで、詳細かつ具体的に解説します。会社の成長と安定を支える株主総会の理解を深め、適切な運営に役立てていきましょう。


株主総会とは何か?その役割と取締役会との違い

株主総会は、会社の株主によって構成される会議体であり、株式会社の最高意思決定機関です。会社法第295条第1項には「株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と定められており、原則として強大な権限が認められています。しかし、取締役会が設置されている会社では、その権限は会社法や定款に規定する事項に限定されます。

株主総会の役割

株主総会は、会社の規模を問わず、全ての会社に存在します。主な役割としては、会社の経営に関する重要事項の意思決定を行うことが挙げられます。これにより、株主は会社の経営に間接的に関与し、取締役の業務執行を監督する仕組みとなっています。

取締役会との違い

取締役会とは、3名以上の取締役から構成される会議体で、株主総会と同じく、会社に関する事項を決定する役割を持ちます。しかし、その役割は株主総会とは異なります。

特徴株主総会取締役会
構成員株主3名以上の取締役
意思決定範囲非取締役会設置会社:会社に関するあらゆる事項<br>取締役会設置会社:会社法および定款で定められた事項会社の基本的な業務執行に関する事項(取締役会設置会社の場合、株主総会の決議事項とされていない事項)
目的株主の利益保護と会社の重要事項の意思決定より機動的な意思決定により、企業活動を迅速に行うこと
設置義務全ての会社に存在任意(取締役会を設置しない会社を「非取締役会設置会社」または「取締役会非設置会社」と呼ぶ)

取締役会設置会社では、日々の業務執行の決定権は取締役会に帰属させ、株主総会はより重要な事項に限定することで、会社として機動的な意思決定ができるように設計されています。


取締役会設置会社と非設置会社における決議事項の違い

株主総会の決議事項は、会社に取締役会が設置されているか否かによって大きく異なります。

非取締役会設置会社の場合

非取締役会設置会社では、株主総会においてあらゆる事項を決議することができます(会社法第295条第1項)。したがって、会社の業務執行全般について、株主総会で決定することが可能です。

取締役会設置会社の場合

取締役会設置会社の場合、株主総会の決議事項は以下の2つに限定されます(会社法第295条第2項)。

  1. 会社法で株主総会の決議事項と定められた事項
  2. 定款で株主総会の決議事項とする旨が定められた事項

これは、取締役会を置くことで、基本的な業務執行の決定権を取締役会に帰属させ、重要な事項のみを株主総会の決議事項とすることで、会社がより機動的に意思決定を行えるようにするためです。


決議事項と報告事項の違い

株主総会では、「決議事項」の他に「報告事項」も存在します。これらはその性質が全く異なります。

報告事項とは

株主総会の報告事項とは、株主総会において、株主に対して報告がなされる事項をいいます。「報告」をすれば足りるため、当該報告について株主総会の承認の「決議」をする必要はありません。

会社法で株主総会での報告が必要と定められている事項は以下の2つです。

  • 事業報告(会社法第438条第3項)
  • 計算書類(会社法第439条、第438条第2項)

ただし、「計算書類」については、以下の全ての条件を満たす場合は「報告事項」となります。

  1. 取締役会設置会社であること
  2. 会計監査人設置会社であること
  3. 計算書類の内容が適正であること(以下の3点を満たす場合)
    • 会計監査報告の内容に問題がない(無限定適正意見である)
    • 監査役の監査報告の内容に問題がない(会計監査人の監査方法・結果を「相当でない」とする意見がない)
    • 計算書類が監査報告の通知報告期限の徒過により監査を受けたものとみなされたものでないこと

上記のいずれにも該当しない場合は、「決議事項」となり、承認の決議が必要となります(会社法第438条第2項)。

例:

大企業A社では、毎年定時株主総会で事業報告と計算書類が株主に報告されます。A社は取締役会設置会社であり、会計監査人も設置しているため、計算書類が適正であると判断されれば、承認決議は不要で、単に報告事項として扱われます。一方、中小企業B社では、会計監査人を設置していないため、計算書類は株主総会での承認決議が必要となります。


株主総会の決議方法:普通決議、特別決議、特殊決議

株主総会の決議は、その事項の重要度に応じて、大きく以下の3つに分類されます。株主は、保有する株式1株につき1個の議決権を有しています(会社法第308条第1項)。そして、株主総会の決議は、一定数以上の議決権を有する株主が出席した上で、出席した株主の議決権の一定以上の割合の賛成が得られた場合に成立します。

決議方法の種類と要件

決議方法定足数(出席株主数)表決数(賛成割合、決議要件)

株主総会決議事項 一覧 : 会社を動かす意思決定のすべて

株式会社には、株主から構成される株主総会が存在します。この株主総会において決定(決議)する事項を「株主総会決議事項」といいます。株主総会の決議が必要な事項は、会社法などの法令で定められており、決議事項の重要度に応じて決議方法も異なります。

この記事では、株主総会の基本的な知識から、決議事項の種類、決議方法、そして実務上の注意点までを網羅的に解説します。具体的な事例を交えながら、株主総会の役割と重要性を深く理解し、会社の適切な運営に役立てるための情報を提供します。


株主総会とは?会社の最高意思決定機関としての役割

株主総会の基本

株主総会とは、株主が会社に関する事項の意思決定をする会議体であり、株式会社の最高意思決定機関です。会社の規模を問わず、全ての会社に存在します。

会社法第295条第1項には「株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と定められており、原則として、強力な権限が認められています。ただし、後述するとおり、取締役会が置かれている会社では、株主総会は会社法や定款に規定する事項だけを決議することができます。

定時株主総会と臨時株主総会

株主総会には、定時株主総会臨時株主総会の2種類があります。

  • 定時株主総会: 毎事業年度の終了から一定期間(通常、事業年度末から3ヶ月以内)に開催されることが義務付けられています。主に、事業報告や計算書類の承認、剰余金の配当、役員の選任・解任などが決議されます。
  • 臨時株主総会: 必要に応じて随時開催される株主総会です。例えば、重要な投資案件の承認や、不祥事による役員の解任など、定時株主総会以外で早急な意思決定が必要な場合に招集されます。

取締役会との違いと権限の所在

取締役会」とは、3名以上の取締役から構成される会議体で、株主総会と同じく、会社に関する事項を決定する役割を持ちます。取締役会がある会社を「取締役会設置会社」、取締役会がない会社を「非取締役会設置会社」あるいは「取締役会非設置会社」といいます。

会社経営に関するあらゆる事項を株主総会で決定するのは非常に大変なため、より機動的な意思決定を行い、企業活動を迅速に行うために取締役会が設置されます。

項目株主総会取締役会
構成員株主3名以上の取締役
意思決定範囲非取締役会設置会社:会社に関するあらゆる事項<br>取締役会設置会社:会社法および定款で定められた事項会社の業務執行に関する決定など、株主総会での決議が認められていない会社に関する幅広い事項を決議する機関
設置形態全ての会社に存在任意(ただし、上場会社など一定の会社は設置義務あり)
役割会社の最高意思決定機関、株主による経営の監督業務執行の意思決定、代表取締役の選定・監督

取締役会設置会社では、株主総会の権限は会社法や定款で定められた事項に限定されます。これは、機動的な経営判断を可能にするためであり、法令で株主総会の決議事項と定められている事項を、取締役会の決議事項とすることはできません。


株主総会の決議事項:取締役会設置の有無による違いと効力

株主総会の決議事項は、会社の取締役会設置の有無によってその範囲が大きく異なります。

非取締役会設置会社の決議事項

非取締役会設置会社では、株主総会においてあらゆる事項を決議することができます(会社法第295条第1項)。したがって、会社の業務執行全般について、株主総会で決定することが可能です。法令で株主総会の決議事項と定められていない事項に関する決議も有効となります。

例:

従業員の採用基準の決定や、特定の事業部門の設置など、取締役会設置会社では取締役会で決議されるような事項も、非取締役会設置会社であれば株主総会で決議できます。

取締役会設置会社の決議事項

取締役会設置会社の場合、株主総会の決議事項は以下の2つに限定されます(会社法第295条第2項)。

  1. 会社法で株主総会の決議事項と定められた事項
  2. 定款で株主総会の決議事項とする旨が定められた事項

これは、取締役会を設置することで、基本的な業務執行の決定権を取締役会に帰属させ、重要な事項だけを株主総会の決議事項とする方が、会社として機動的な意思決定ができるためです。

例:

取締役会設置会社において、新商品の開発予算の決定は通常、取締役会の決議事項となります。しかし、定款で「新商品の開発予算の決定は株主総会の承認を得るものとする」と定められていれば、株主総会の決議事項となります。

法定されていない事項を決議した場合の効力

法令で株主総会の決議事項と定められていない事項を決議した場合の効力(有効・無効)は、取締役会が設置されているか否かで異なります。

  • 非取締役会設置会社: 株主総会においてあらゆる事項を決議することができますので、株主総会の決議事項として法定されていない事項に関する決議も有効です。
  • 取締役会設置会社: 法令または定款で株主総会の決議事項と定められていない事項について株主総会決議をしても、それは法律上無効です。これは、会社の定款において、株主総会の決議事項とする旨を定める必要があるためです(会社法第295条第2項)。

決議事項と報告事項:その明確な違い

株主総会では、株主の承認が必要な「決議事項」と、単に株主へ知らせる「報告事項」の2種類があります。

報告事項の具体例

株主総会の報告事項とは、株主総会において、株主に対して報告がなされる事項をいいます。「報告」をすれば足りるので、当該報告について株主総会の承認の「決議」をする必要はありません。

会社法で、以下の2つが報告事項として定められています。

  1. 事業報告(会社法第438条第3項): 会社の事業年度における経営成績や財務状態、重要な出来事などを株主へ報告します。
  2. 計算書類(会社法第439条、第438条第2項): 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表など、会社の財務状況を示す書類を株主へ報告します。

計算書類が報告事項となる条件

「計算書類」は、以下の①~③を全て満たす場合は「報告事項」となりますが(会社法第439条)、いずれにも該当しない場合は「決議事項」となり、承認の決議が必要となります(会社法第438条第2項)。

  1. 取締役会設置会社であること
  2. 会計監査人設置会社であること
  3. 次の3点を満たすこと(計算書類の内容が適正であること)
    • 会計監査報告の内容に問題がない(無限定適正意見である)
    • 監査役の監査報告の内容に問題がない(会計監査人の監査方法・結果を「相当でない」とする意見がない)
    • 計算書類が監査報告の通知報告期限の徒過により監査を受けたものとみなされたものでないこと

例:

上場企業A社では、取締役会を設置し、会計監査人による厳格な監査を受けています。毎年、会計監査人から計算書類に対する「無限定適正意見」が提出され、監査役も問題がないと判断しています。この場合、A社の計算書類は株主総会で承認決議を必要とせず、報告事項として株主に報告されるだけで済みます。

一方、中小企業B社では、取締役会は設置しているものの、会計監査人を設置していません。この場合、B社の計算書類は上記の条件を満たさないため、株主総会での承認決議が必要となります。


株主総会の決議方法:普通決議、特別決議、特殊決議

株主総会の決議方法は、決議事項の重要度に応じて、大きく3つに分類されます。株主は、保有する株式1株につき1個の議決権を有しており(会社法第308条第1項)、決議は、一定数以上の議決権を有する株主が出席した上で、出席した株主の議決権の一定以上の割合の賛成が得られた場合に成立します。

3つの決議方法は、株主総会が成立するための「定足数」(出席株主数)と、賛否を決するための「表決数」(賛成割合、決議要件)がそれぞれ異なります。

決議方法定足数(出席株主数)表決数(決議要件)

1.事業譲渡における株主総会の決議事項と手続き

事業譲渡とは、会社が事業の一部または全部を他社に譲り渡す行為であり、会社の根幹に関わる重要な経営判断です。そのため、会社法によって株主総会の決議が必須とされています。ここでは、事業譲渡における株主総会決議事項と、それに伴う手続きについて詳しく解説します。

1.1.事業譲渡と株主総会決議の必要性

会社法第467条第1項では、事業の全部または重要な一部の譲渡、および事業の全部または重要な一部の譲り受けは、株主総会の特別決議を必要とすると定められています。これは、株主にとって重大な影響を及ぼす可能性があるため、株主の意思を反映させる必要があるからです。

事業譲渡の主な決議事項

事業譲渡に関する株主総会の決議事項は、主に以下の点が挙げられます。

  1. 譲渡または譲り受けの事業の範囲: どの事業を譲渡するのか、または譲り受けるのかを明確にします。
  2. 相手方の商号または名称および住所:事業の譲渡・譲り受けの相手方の特定が必要です。
  3. 対価の種類および額:事業の売買価格や、その支払いの方法(現金、株式など)を定めます。
  4. その他事業譲渡に関する重要な事項:事業譲渡契約の細目や、従業員の処遇、顧客情報の移管など、事業譲渡に伴う具体的な条件を決定します。
  5. 契約書の内容:事業譲渡契約書の内容全体を承認する必要があります。

株主への影響と保護

事業譲渡は、会社の事業内容や収益構造を大きく変化させる可能性があり、株主の投資判断にも影響を与えます。例えば、収益性の高い事業を譲渡すれば、会社の将来的な収益が減少する可能性があります。逆に、新たな事業を譲り受けることで、会社の成長を期待できるかもしれません。

このような影響を考慮し、会社法は株主の利益を保護するために、株主総会の特別決議を義務付けています。これにより、株主は事業譲渡の是非を議論し、賛否を表明する機会を得ることができます。

1.2.決議の種類と要件:特別決議の適用

事業譲渡は、会社の存続や株主の利益に与える影響が大きいため、株主総会の特別決議が必要となります。

特別決議の要件

特別決議の要件は、会社法第309条第2項に定められており、以下の両方を満たす必要があります。

  1. 議決権の過半数を有する株主の出席: 株主総会が成立するための定足数として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が総会に出席している必要があります。ただし、定款でこの要件を3分の1以上の割合まで緩和することも可能です。
  2. 出席株主の議決権の3分の2以上の賛成: 出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成する必要があります。この要件は、定款で修正・排除することができません。

なぜ特別決議が必要なのか?

特別決議は、通常の決議(普通決議)よりも厳しい要件が課されており、会社の重要な意思決定に用いられます。事業譲渡のような会社の事業の根幹に関わる事項は、普通決議で安易に決定されると、一部の株主の意向だけで会社の方向性が大きく変わってしまう危険性があるため、より多くの株主の同意を得る必要があるとされています。

例:

あるIT企業が、収益の大部分を占めるWebサービス事業を他社に譲渡することを検討しました。この事業譲渡を実行するには、株主総会で特別決議を経る必要があります。仮に、発行済株式総数の議決権の60%を持つ株主が総会に出席し、そのうちの60%が賛成したとしても、これは特別決議の要件である「出席株主の議決権の3分の2(約66.7%)以上の賛成」を満たしません。したがって、この事業譲渡は決議されず、実行することはできません。

1.3.事業譲渡の手続きの流れと注意点

事業譲渡の手続きは、株主総会決議以外にも様々な段階があります。

  1. 事業譲渡契約の締結: 譲渡側と譲受側で事業譲渡に関する基本合意書を締結します。
  2. 事前開示書類の備え置き: 株主総会の日の2週間前までに、事業譲渡に関する事項を記載した書類を本店に備え置き、株主が閲覧できるようにします。
  3. 株主総会の招集: 株主総会を招集し、事業譲渡に関する特別決議を行います。
  4. 反対株主への対応: 事業譲渡に反対する株主は、会社に対して株式買取請求権を行使することができます。会社は、適正な価格で株式を買い取る義務があります。
  5. 公正取引委員会への届出(必要な場合): 事業譲渡の規模によっては、独占禁止法に基づき公正取引委員会への届出が必要となる場合があります。
  6. 契約の実行と事業の移管: 株主総会での承認後、事業譲渡契約を履行し、事業の移管を行います。

注意点

  • 詳細な情報開示: 株主が適切な判断を下せるよう、事業譲渡の目的、条件、メリット・デメリット、将来的な影響など、詳細な情報を開示することが重要です。
  • 反対株主への説明: 反対株主に対しては、丁寧に説明を行い、理解を求める努力が求められます。
  • 専門家との連携: 事業譲渡は法務、税務、会計など多岐にわたる専門知識が必要となるため、弁護士、税理士、公認会計士などの専門家と連携して手続きを進めることが不可欠です。

例:

X社がY社へ主力事業を譲渡する計画を立てた際、株主総会開催の1ヶ月前から、事業譲渡契約書案や、事業譲渡による財務への影響に関する詳細な資料をIRサイトで公開しました。また、株主総会では、CFOが事業譲渡の戦略的意義や、株主価値向上への貢献について詳しく説明し、株主からの質問にも丁寧に答えました。しかし、一部の株主からは事業譲渡による将来的な収益減少を懸念する声が上がり、彼らは株式買取請求権を行使しました。X社は、これらの株主と個別に交渉し、最終的には合意に至りました。


2.役員等の選任・解任に関する株主総会決議事項

会社の経営を担う役員(取締役、監査役、会計参与、会計監査人など)の選任や解任は、会社の将来を左右する重要な意思決定です。そのため、会社法において株主総会の決議事項とされています。

2.1.役員選任・解任の重要性

取締役や監査役などの役員は、会社から委任を受けて株主の利益のために業務を行うことが求められます。したがって、その選任・解任に関する事項については、株主総会の決議事項とされています。

取締役の選任・解任

取締役は会社の経営を株主から委任され、株主のために職務を行う立場にあります。株主が取締役の選任・解任を行うことで、取締役の業務執行を常に監督する仕組みとなっています。

  • 選任: 新たな取締役を選ぶ際には、株主総会での承認が必要です。通常、複数の候補者が提案され、株主の投票によって選任されます。
  • 解任: 任務懈怠や不正行為があった場合など、取締役の職務執行に問題がある場合には、株主総会で解任決議を行うことができます。解任は、普通決議で可能ですが、不正行為などがあった場合は株主の特別決議を要する場合があります。

監査役の選任・解任

監査役は、会社の委任を受けて取締役の業務執行を監督する立場にあります。そのため、株主が選任・解任を行い、取締役(取締役会)が選任・解任することを禁止する仕組みとなっています。これは、監査役が取締役から独立した立場で公正に監査を行うことを担保するためです。

例:

ある上場企業で、現行の取締役会が新たな事業戦略を推進するために、これまで社外取締役として活躍してきたA氏を代表取締役に選任することを検討しました。この選任には、定時株主総会での普通決議が必要となります。総会では、A氏の経歴や経営手腕、新事業戦略への貢献が説明され、株主の賛同を得て選任されました。


3.会社の計算に関する株主総会決議事項

会社の計算に関する事項、特に計算書類の確定は、会社の財務状況を明確にし、剰余金の額や分配可能額の算定の基礎となる重要な事項です。そのため、株主総会の承認決議が必要とされています。

3.1.計算書類の承認

会社の計算に関する事項のうち、計算書類の承認は、剰余金の額や分配可能額の算定の基礎となる重要な事項であるため、株主総会の承認決議が必要とされています(会社法第438条第2項)。

計算書類の種類

計算書類には、主に以下のものがあります。

  • 貸借対照表: 特定の時点における会社の財政状態(資産、負債、純資産)を示します。
  • 損益計算書: 特定の期間における会社の経営成績(収益、費用、利益)を示します。
  • 株主資本等変動計算書: 一定期間における純資産の変動状況を示します。
  • 個別注記表: 計算書類に記載された事項を補足する情報です。

これらの書類は、株主が会社の財政状態や経営成績を理解し、投資判断を行う上で不可欠な情報となります。

3.2.承認が不要な場合(報告事項となる場合)

ただし、以下の3つの要件を全て満たす場合は、株主総会への「報告事項」となり、株主総会の「決議」は不要となります(会社法第439条)。

  1. 取締役会設置会社であること
  2. 会計監査人設置会社であること
  3. 監査の結果、計算書類に問題がないこと(具体的には、以下の3点を満たす場合)
    • 会計監査報告の内容に問題がない(無限定適正意見である)
    • 監査役の監査報告の内容に問題がない(会計監査人の監査方法・結果を「相当でない」とする意見がない)
    • 計算書類が監査報告の通知報告期限の徒過により監査を受けたものとみなされたものでないこと

例:

大手製造業M社では、毎年定時株主総会で計算書類を報告しています。M社は取締役会設置会社であり、会社法に基づき会計監査人も設置しています。会計監査人による監査の結果、計算書類には全く問題がなく、会計監査報告には無限定適正意見が記載されています。また、監査役も計算書類の適正性を確認しています。この場合、M社の計算書類は株主総会での承認決議を必要とせず、株主への報告事項として扱われます。これにより、株主総会の効率化が図られています。


4.株主の利益に関する株主総会決議事項

株主の利益に直接影響を与える事項は、株主総会の決議事項とされています。特に、株主に及ぼす影響が大きい事項については、株主において慎重に判断すべきであるため、株主総会の決議事項とされています。

4.1.剰余金の配当

剰余金の配当は、会社が稼いだ利益を株主に還元する行為であり、株主の最も関心が高い事項の一つです。会社法第454条に基づき、株主総会の普通決議が必要です。

配当の決定プロセス

  1. 取締役会での配当案決定: 取締役会設置会社の場合、取締役会が配当の基本方針や具体的な配当額を決定します。
  2. 株主総会での承認: 株主総会において、取締役会が提案した配当案について承認決議を行います。

配当の決定は、単に利益を分配するだけでなく、会社の財務状況、将来の事業投資計画、キャッシュフローなどを総合的に考慮して行われるべきです。

例:

A社は、好調な業績を受けて、今期の配当金を前期よりも増額することを検討しました。取締役会で配当案を決定し、定時株主総会に提出しました。株主総会では、株主から配当性向や今後の事業投資計画に関する質問が出ましたが、適切な説明により、最終的に普通決議で配当案が承認されました。

4.2.株式の併合

株式の併合とは、複数の株式をまとめて1株にする手続きです(会社法第180条第2項)。例えば、10株を1株に併合する場合、株主の保有株式数は10分の1になりますが、1株あたりの価値は10倍になります。これは株主の権利に大きな影響を与えるため、株主総会の特別決議が必要です。

株式併合の目的

株式併合は、以下のような目的で行われることがあります。

  • 株価の適正化: 株価が低くなりすぎた場合に、株式併合によって1株あたりの株価を高くし、投資家の興味を引くことを目的とします。
  • 投資単位の調整: 細分化されすぎた株式をまとめることで、売買単位を大きくし、流動性を調整します。
  • 管理コストの削減: 株主数の減少により、株主名簿管理などの事務コストを削減します。

例:

株価が著しく低迷しているB社は、投資家からの評価を高めるため、10株を1株に併合する株式併合を検討しました。この株式併合には、株主総会での特別決議が必要となります。株主総会では、併合の目的や株主への影響、今後の事業計画が説明され、株主の承認を得て決議されました。

4.3.その他株主の利益に関する事項

その他、以下のような株主の利益に大きく影響する事項も、株主総会の決議事項となります。

  • 譲渡制限株式の譲渡承認の決定(非取締役会設置会社): 会社の定款に譲渡制限が付されている株式の譲渡を承認するかどうかの決定です。非取締役会設置会社では、株主総会の特別決議が必要です(会社法第139条第1項)。
  • 自己株式の取得に関する事項の決定: 会社が自社の株式を買い戻すことを指します。株価の安定や、株主への利益還元を目的として行われます。株主総会の特別決議が必要です(会社法第156条第1項、第160条第1項)。
  • 相続人等に対する株式の売渡請求の決定: 相続によって譲渡制限株式を取得した者に対し、会社がその株式を買い取ることを請求する決定です。株主総会の特別決議が必要です(会社法第175条第1項)。
  • 募集株式の発行等における募集事項の決定: 新たな株式を発行し、資金調達を行う際の募集条件の決定です。株主総会の特別決議が必要です(会社法第199条第2項)。
  • 新株予約権の発行における募集の決定: 将来、株式を一定の価格で取得できる権利(新株予約権)を発行する際の募集条件の決定です。株主総会の特別決議が必要です(会社法第238条第2項)。

これらの事項は、株主の権利や財産に直接的な影響を与えるため、慎重な検討と株主の合意が求められます。


5.取締役等の利益相反のおそれがある事項に関する株主総会決議事項

取締役の報酬や、取締役と会社の間での取引など、取締役自身の利益と会社の利益が相反する可能性がある事項については、株主総会の決議事項とされています。これは、いわゆる「お手盛り」を防ぎ、株主の利益を保護するためです。

5.1.取締役・監査役・会計参与の報酬等の決定

取締役や監査役、会計参与の報酬は、会社法第361条第1項、第379条第1項、第387条第1項に基づき、株主総会の普通決議が必要です。

「お手盛り」の危険性の排除

もし取締役自身が自分の報酬を決定できるとすれば、不当に高額な報酬が設定される危険性があります。これを「お手盛り」といいます。株主総会で報酬を決定することで、株主が取締役をコントロールし、適正な報酬が支払われるようにする仕組みとなっています。

報酬の決定における考慮事項

報酬の決定に際しては、以下の点が考慮されます。

  • 会社の業績: 会社の業績が好調であれば、それに応じて報酬を増額する傾向があります。
  • 職務内容と責任: 役員の職務内容や負う責任の重さに応じて、報酬額が決定されます。
  • 同業他社の水準: 同業他社の役員報酬水準も参考にされます。
  • 株主の理解: 株主が納得できるような透明性のある決定プロセスが求められます。

例:

あるスタートアップ企業が急成長を遂げ、既存の取締役の報酬水準が見直されることになりました。取締役会は、会社の業績と今後の事業拡大に向けた取締役の貢献を考慮し、報酬の増額案を株主総会に提出しました。株主総会では、株主から報酬増額の根拠や、業績への貢献度について質問が出ましたが、詳細な説明と将来の成長戦略への期待感から、最終的に普通決議で報酬増額案が承認されました。

5.2.取締役の競業取引・利益相反取引の承認(非取締役会設置会社)

取締役が会社と競合する事業を行ったり、会社との間で利益相反となる取引を行ったりする場合、非取締役会設置会社においては株主総会の普通決議が必要です(会社法第356条第1項)。

競業取引とは

競業取引とは、取締役が会社の事業と競合する事業を行うことを指します。例えば、会社の主要顧客を奪い取るような行為などが該当します。

利益相反取引とは

利益相反取引とは、取締役と会社の間で利益が相反する取引を行うことを指します。例えば、取締役が会社の不動産を安く買い取ったり、会社が取締役から高額な商品を買い付けたりするようなケースです。

これらの取引は、取締役が自己の利益を優先し、会社の利益を損なう危険性があるため、株主総会の承認を得て、その適正性を確保する仕組みとなっています。取締役会設置会社では、これらの取引は取締役会の承認事項となります。

例:

非取締役会設置会社であるC社の代表取締役Dは、C社が手掛けるソフトウェア開発事業とは別に、個人的に類似のソフトウェア開発会社を設立することを検討していました。これは競業取引に該当するため、C社の株主総会で承認を得る必要がありました。株主総会では、D氏が競業取引を行うことによるC社への影響や、情報管理体制について議論され、最終的に普通決議で承認されました。


株主総会決議が行われない場合のリスクと書面決議の活用

必要な株主総会決議がなされない場合のリスク

株主総会決議が必要な事項について株主総会決議がなされていない場合や決議方法に瑕疵があった場合は、会社の当該行為が無効になるリスクがあります。

具体的には、以下①~③の訴訟により、株主総会決議の適法性が争われます。

  1. 株主総会決議の取消しの訴え(会社法第831条):招集手続きや決議方法が法令・定款に違反しているか、極めて不公正な場合、または決議の内容が定款に違反している場合、または特別利害関係者が議決権を行使したことで極めて不当な決議となった場合に提起されます。訴えを起こせる期間は、決議のあった日から3ヶ月以内です。例:ある会社で、株主総会の招集通知が一部の株主に対して適切に送付されなかったため、その株主が決議の取消しの訴えを提起しました。裁判所がこの訴えを認めると、当該株主総会決議は取り消されます。
  2. 株主総会の不存在の確認の訴え(会社法第830条第1項):議事録は存在していても株主総会が開かれていない、手続きの不備が大きくて総会を開催したとは言えないなどの場合、決議はなかったものと見なされます。決議の不存在を確かめることを目的に、訴訟を起こします。例:中小企業で、取締役の選任は株主総会決議が必要な事項ですが、株主総会決議が行われていないにもかかわらず、議事録だけを作成して役員登記をしているケースがありました。後日、この会社で支配権争いが起き、取締役の選任決議について株主総会不存在の確認の訴えが提訴され、裁判所がこれを認めた場合、当該取締役の選任は無効となります。
  3. 株主総会決議の無効の訴え(会社法第830条第2項):決議の内容が法令に反する場合、例えば剰余金の違法配当などは、訴訟を起こさなくても決議は無効となります。訴訟によって、決議が無効であることを確認できます。例:会社が、会社法に定められた配当可能額を超えて剰余金の配当を決議した場合、その決議は法令違反であるため無効となります。株主は、この決議の無効確認の訴えを提起することができます。

このような訴訟が提起されると、対応する時間や費用が発生するほか、決議の取消し・不存在・無効などが確定すると、決議が有効であることを前提に行われた企業活動の有効性についても争いが生じ、円滑な企業活動に多大な支障が生じます。

株主総会の書面決議(みなし決議)の活用

株主総会は、実際に株主を招集して決議を行う方法以外にも、株主全員が書面(メールなどの電磁的記録も含む)で同意することで、「決議があったものとみなす」ことができます(会社法第319条第1項)。この書面による決議を、「書面決議」または「みなし決議」といいます。

書面決議のメリット

  • 費用・手間の削減: 株主総会の実開催には、招集手続きや会場の確保などに費用・手間がかかります。書面決議を利用することで、これらの負担を大幅に削減できます。
  • 迅速な意思決定: 株主全員の同意があれば、即座に決議が成立するため、迅速な意思決定が可能です。

書面決議の対象

書面決議の対象となる決議事項は、株主総会の決議事項であれば全て可能です。したがって、特殊決議に該当する会社の解散など、重要な事項であっても、株主全員の書面による同意がある場合は、株主総会を開催せずに決議をすることができます。

例:

株主が少ない非上場会社(非公開会社)では、この書面決議(みなし決議)が日常的に行われています。例えば、役員の任期満了に伴う再任決議の場合、全株主からメールで同意書を得ることで、実際に株主総会を開催することなく決議を完了させることができます。


株主総会議事録の電子化

株主総会の決議事項をまとめた「株主総会議事録」は、会社法第318条により作成が義務付けられています。この議事録は、電子化することが可能になりました。

株主総会議事録の保管義務

本店には議事録の原本を株主総会の日から10年間、支店には写しの5年間保管が必要です。ただし、電磁的方法で作成し、法務省令で定める方法で表示したものの閲覧・謄写の請求に応じることができれば、写しを5年間保管しなくても良くなります。

株主総会議事録の電子化方法

株主総会議事録をパソコンで作成しただけでは、電磁的方法で作成した議事録とは認められません。電磁的方法による作成は、電子署名が必要となるケースがあるためです。電子署名とは、オンライン上で契約者本人であることを証明するためのもので、紙面上の署名にあたります。

電子署名もまた、オンライン上で署名を入力しただけでは認められません。法務局に認定された信頼できる機関が、本人によって電子署名されたことを証明する仕組みの整った電子署名サービスの利用が必要です。要件を満たす電子署名を用いることで、電磁的方法で作成したことになります。

押印の原則と例外

株主総会議事録は原則、押印は不要です。電子化した場合も同様です。ただし、定款で押印を定める場合と代表取締役を選定する場合は、押印が必要です。


まとめ:株主総会決議事項の適切な理解と運用

株主総会決議事項は、会社の経営の根幹をなす重要な意思決定であり、その種類、決議方法、手続きは会社法によって詳細に定められています。普通決議、特別決議、特殊決議といった決議方法の理解はもちろん、取締役会設置会社の有無による決議事項の範囲の違い、そして決議事項と報告事項の区別など、正確な知識を持つことが、会社の適法かつ円滑な運営には不可欠です。

適切な株主総会決議は、会社の信頼性を高め、長期的な安定経営に繋がります。万が一、決議に瑕疵があった場合、その行為が無効となるリスクがあり、会社の事業活動に多大な支障をきたす可能性もあります。したがって、株主総会の招集手続きから決議、議事録の作成・保管に至るまで、常に会社法を遵守し、細心の注意を払うことが求められます。書面決議の活用や議事録の電子化など、時代の変化に対応した柔軟な運用も視野に入れながら、株主総会を適切に開催していくことが重要です。

株主総会に関する不明点や具体的な手続きについては、弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをお勧めします。