That節で動詞が原形になるケース : 要求表現 ・ 仮定的用法 ・ shouldの省略 ・ 動詞の形を理解すると、通常の英文法では「三人称単数なら動詞に-sが付くはずなのに、なぜ原形なのか」と迷う場面を正確に読み取れるようになります。たとえば、I suggested that he go there. の go は、主語が he だからといって goes にはなりません。このような形は、要求・提案・命令などを表す表現や、仮定的な内容を表す文で特に見られます。
英語では、動詞の形は単純に「主語が何か」だけで決まるわけではありません。文全体がどのような意味を表しているのかによって、that節の中の動詞が原形になることがあります。特に重要なのが、いわゆる仮定法現在と呼ばれる用法です。また、イギリス英語などでは should を使って表す形もあり、その should が省略された結果、動詞だけが原形として残ることもあります。
1. That節の動詞が原形になる基本的なケース
まず、もっとも重要なのは、要求・提案・命令・必要性などを表す動詞や表現の後ろにthat節が続く場合です。
たとえば、次の文を見てみましょう。
- I suggested that he go there.
- She insisted that he leave immediately.
- They demanded that the company change its policy.
それぞれ、
- 「彼がそこへ行くように提案した」
- 「彼がすぐに立ち去るよう強く要求した」
- 「会社が方針を変更するよう要求した」
という意味になります。
ここで he go や he leave、the company change に注目してください。
通常の現在形なら、
- He goes there.
- He leaves immediately.
- The company changes its policy.
となるはずです。
しかし、that節の中では goes ではなく go、leaves ではなく leave、changes ではなく change となっています。
これは間違いではありません。that節が単なる事実を述べているのではなく、「~することを求める・提案する・要求する」という内容を表しているため、動詞が原形になることがあります。
2. 「主語が三人称単数なのに原形」という特徴
この用法で特に混乱しやすいのが、三人称単数主語との組み合わせです。
たとえば、
I recommend that she take a taxi.
she は三人称単数なので、普通なら takes を使いたくなります。
しかし、この文では、
I recommend that she take a taxi.
が正しい形です。
比較すると違いが分かります。
| 通常の現在形 | That節の原形 |
|---|---|
| She takes a taxi. | I recommend that she take a taxi. |
| He goes home. | I suggest that he go home. |
| She be more careful. | I insist that she be more careful. |
| He leaves now. | They demand that he leave now. |
通常の文では主語に合わせて動詞が変化します。一方、要求・提案などを表すthat節では、主語が he や she、it であっても動詞を原形にすることがあります。
つまり、
「三人称単数だから必ず-sを付ける」ではなく、「どのような構文の中にある動詞なのか」を確認することが重要です。
3. 要求・提案を表す動詞に注目する
この用法を見抜くには、that節の前にある動詞を見るのが効果的です。
代表的なものには次のような動詞があります。
- suggest:提案する
- recommend:勧める
- insist:強く要求する
- demand:要求する
- request:要請する
- require:要求する
- propose:提案する
- urge:強く促す
たとえば、
The doctor recommended that he get more rest.
では、get が原形です。
意味は「医師は彼がもっと休むよう勧めた」です。
また、
They demanded that she apologize.
なら、「彼女が謝るよう彼らは要求した」という意味です。
she だから apologizes とするのではなく、apologize が使われています。
4. 「~するように」という意味を意識する
この構文を理解するときは、that節を単なる「~という事実」と考えないことが重要です。
たとえば、
I suggested that he go home.
を、
「私は、彼が家に行くという事実を提案した」
と考えると不自然です。
実際には、
「私は彼が家に帰るよう提案した」
という意味です。
つまりthat節の内容は、現実に起こっている事実というより、「これからそうすることを求める・提案する」内容になっています。
この「~するように」という感覚を持つと、動詞が原形になる理由を理解しやすくなります。
5. 仮定的な用法としてのthat節
このような原形は、文法上「仮定法現在」と呼ばれることがあります。
ここでいう「仮定法」は、日本の学習者がよくイメージする、
If I were you, …
のような仮定法過去とは少し異なります。
That節の仮定法現在では、「こうすることが必要だ」「こうすることを求める」「こうすることが望ましい」など、現実の事実とは区別された要求・提案・必要性を表します。
たとえば、
It is important that everyone be on time.
は、
「全員が時間どおりに来ることが重要だ」
という意味です。
everyone は三人称単数なので、普通なら is を使いそうですが、
everyone be on time
となります。
同様に、
It is essential that he follow the rules.
では he follows ではなく he follow です。
6. 形容詞の後ろでも原形になる
原形になるthat節は、要求・提案を表す動詞だけに限られません。
「重要だ」「必要だ」「望ましい」などを表す形容詞の後ろでも使われます。
代表的な表現は次のとおりです。
- It is important that …
- It is essential that …
- It is necessary that …
- It is vital that …
- It is desirable that …
たとえば、
It is important that she be careful.
「彼女が注意することが重要です。」
It is necessary that he attend the meeting.
「彼が会議に出席する必要があります。」
It is essential that everyone follow the rules.
「全員が規則に従うことが不可欠です。」
この場合も、she is、he attends、everyone follows とはしません。
7. be動詞も原形になる
特に重要なのが、be動詞も原形の be になるという点です。
通常の現在形では、
- I am
- you are
- he is
- she is
- they are
のように主語によって形が変わります。
しかし、仮定法現在のthat節では、主語に関係なく be を使います。
I suggest that he be more careful.
They insisted that she be present.
It is important that everyone be ready.
このように、
he is → he be
she is → she be
everyone is → everyone be
となります。
そのため、that節で be が出てきたら、「be動詞の原形がなぜ使われているのか」という視点で確認するとよいでしょう。
8. shouldを使う形との関係
ここで、もう一つ重要なポイントがあります。
要求・提案・必要性などを表すthat節では、原形を使う代わりに should + 動詞の原形 を使うことがあります。
たとえば、
I suggested that he go home.
という文は、
I suggested that he should go home.
のようにも表せます。
どちらも「私は彼が家に帰るよう提案した」という意味です。
比較すると次のようになります。
| 原形を使う形 | shouldを使う形 |
|---|---|
| I suggested that he go home. | I suggested that he should go home. |
| They insisted that she leave. | They insisted that she should leave. |
| It is important that he be there. | It is important that he should be there. |
特にアメリカ英語では前者の原形を使う形がよく見られ、イギリス英語では should + 動詞の原形 の形もよく使われます。
9. 「shouldの省略」と考えると分かりやすい場合
原形になる形を理解する方法として、
that + 主語 + should + 動詞の原形
という形から should が省略されたものとして考える方法があります。
たとえば、
I insist that he should leave.
から should を取ると、
I insist that he leave.
となります。
このように考えると、なぜ he leaves ではなく he leave になるのかが理解しやすくなります。
ただし、実際の文法分析では、単純に「いつでもshouldを省略しただけ」と考えるのではなく、仮定法現在として独立した構文になっていると捉えることも重要です。
つまり、
that + 主語 + 動詞原形
という形そのものが、要求・提案・必要性などを表す構文として成立しています。
10. 原形になるかどうかを見分ける
英文を読んでいて、that節の中に原形の動詞が出てきたら、次の順番で確認すると分かりやすくなります。
- thatの前にどんな表現があるかを見る
- 要求・提案・命令・必要性などの意味があるか確認する
- that節の主語を確認する
- 主語が三人称単数なのに動詞が原形なら、この構文を疑う
should + 動詞原形に置き換えて意味が成立するか考える
たとえば、
The manager requested that John arrive early.
を見た場合、
John は三人称単数です。
通常なら、
John arrives early.
となります。
しかし requested that ... という「~するよう要請した」という表現があるため、
John arrive early
という原形が使われています。
11. 一般動詞だけでなく助動詞にも注意する
原形になる構文では、助動詞との関係も確認しておきましょう。
should を使う場合、
that he should go
のように should の後ろは必ず動詞の原形です。
一方、should を使わない場合は、
that he go
となります。
したがって、
that he goes
that he should goes
は、この構文では誤りです。
正しくは、
that he go
または、
that he should go
です。
12. 否定形でも動詞は原形
否定を表す場合も、基本的な考え方は同じです。
I suggested that he not go there.
「私は彼がそこへ行かないよう提案した。」
ここでは not go となっています。
また、
They insisted that she not be late.
「彼らは彼女が遅れないよう強く求めた。」
では not be です。
この場合も does not などを使って、
that he doesn’t go
とする必要はありません。
原形を使う構文では、
not + 動詞原形
という形を基本として考えると整理しやすくなります。
13. 普通のthat節と比較すると理解しやすい
すべてのthat節で動詞が原形になるわけではありません。
ここは非常に重要です。
たとえば、
I know that he lives in Tokyo.
では、he lives と三人称単数現在の形になっています。
これは「彼が東京に住んでいる」という事実を知っている、という意味だからです。
一方、
I suggest that he live in Tokyo.
では、「彼が東京に住むことを提案する」という意味なので、live が原形になります。
比較すると次のようになります。
| 文 | 動詞 | 理由 |
|---|---|---|
| I know that he lives there. | lives | 事実・情報を述べる |
| I think that he lives there. | lives | 事実について考える |
| I suggest that he live there. | live | 提案する |
| I insist that he live there. | live | 要求する |
| It is important that he live there. | live | 必要・重要性を表す |
つまり、thatがあるから原形になるのではありません。
「that節がどのような意味を担っているか」がポイントです。
14. よく出る表現をまとめる
覚えておきたい表現を整理すると、次のようになります。
| 表現 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| suggest that | ~するよう提案する | suggest that he go |
| recommend that | ~するよう勧める | recommend that she take it |
| insist that | ~するよう強く要求する | insist that he leave |
| demand that | ~するよう要求する | demand that they apologize |
| request that | ~するよう要請する | request that he attend |
| require that | ~することを要求する | require that everyone be present |
| urge that | ~するよう強く促す | urge that she seek help |
| It is important that | ~することが重要だ | It is important that he be there |
| It is necessary that | ~する必要がある | It is necessary that she attend |
これらの後ろにthat節が続く場合、動詞が原形になる可能性が高くなります。
15. 「原形=過去形ではない」と注意する
英文を読むとき、go や leave のような原形を見ると、時制が分からなくなることがあります。
しかし、
I suggested that he go home.
の go は過去形ではありません。
主節の suggested は過去形ですが、that節の go は仮定的・要求的な内容を表すために原形になっています。
つまり、
suggested = 主節の過去形
go = that節の仮定法現在の原形
というように、主節とthat節の動詞の形を別々に考える必要があります。
16. 「動詞の形」だけでなく意味を見る
英文法では、動詞の形だけを見て判断すると間違いやすいことがあります。
たとえば、
She suggested that he goes home.
という形を見たとき、「heだから三単現で正しい」と考えるだけでは不十分です。
goes なのか go なのかは、that節がどのような意味で使われているかによって判断します。
「彼が家に帰るという事実を述べている」のなら通常の現在形になる可能性があります。
一方、
「彼が家に帰るよう提案した」という意味なら、
She suggested that he go home.
という原形の形が使われます。
この違いは、単なる動詞変化の問題ではなく、話し手がその内容を「事実」として扱っているのか、「要求・提案・必要な行動」として扱っているのかという意味の違いでもあります。
17. 原形を見つけたときの読解手順
実際の英文では、次のように読むとスムーズです。
thatを見つける- that節の主語を確認する
- 主語が三人称単数なのに動詞が原形なら注目する
- thatの前の動詞・形容詞を見る
- suggest、recommend、insist、demand、important、necessaryなどがないか確認する
- 「~するように」「~することが必要」という意味になるか考える
- 必要なら
should + 動詞原形に置き換えて確認する
たとえば、
The teacher insisted that every student be quiet.
なら、
every student は三人称単数ですが、is ではなく be です。
insisted が「強く要求した」という意味なので、
「すべての生徒が静かにしているよう、先生は強く求めた」
と理解できます。
18. 重要なポイントを整理する
最後に、that節で動詞が原形になる場合を整理しておきましょう。
- 要求・提案・要請などを表すthat節では動詞が原形になることがある
- 主語が三人称単数でも
-sを付けない he go、she take、everyone beのような形が可能beも主語に関係なく原形になるshould + 動詞原形で表すこともできる- イギリス英語ではshouldを使う形もよく見られる
thatがあるだけで原形になるわけではない- 事実を述べる通常のthat節では、通常の時制・主語に応じた動詞変化を使う
- 原形か三単現かは、that節の意味と前にある表現を確認して判断する
たとえば、
I know that he works hard.
と
I suggest that he work harder.
を比較すれば、この違いが分かりやすくなります。
前者は「彼が一生懸命働いている」という事実について述べています。そのため works です。
後者は「彼がもっと一生懸命働くよう提案する」という要求・提案的な意味なので work となります。
まとめ:That節で動詞が原形になるケース
That節で動詞が原形になるケース : 要求表現 ・ 仮定的用法 ・ shouldの省略 ・ 動詞の形を理解するポイントは、「that節だから原形になる」と覚えるのではなく、要求・提案・要請・必要性などの意味を持つ構文で原形が使われる、と捉えることです。suggest that he go、insist that she leave、It is important that everyone be ready のように、三人称単数主語でも動詞に-sを付けない形が使われ、should + 動詞原形 によって表現することもできます。英文中で「主語は三人称単数なのに動詞が原形」という形を見つけたら、まずthat節の前にある表現を確認し、「~するように」「~することが必要だ」という意味になっていないかを考えると、動詞の形を正しく判断できるようになります。