RESAS 地域 経済 分析 システムは、地域経済に関するさまざまなデータを地図やグラフなどで可視化し、地域の現状や課題を把握するための政府のデータプラットフォームです。人口、産業構造、観光、地域経済循環、農林水産業、医療・介護、マーケティングなど幅広い分野を一つのシステム上で確認できるため、自治体の政策立案だけでなく、企業の経営戦略、地域事業者の市場分析、大学や学校での地域研究などにも活用できます。
RESAS 地域 経済 分析 システムの大きな特徴は、専門的な統計処理を一から行わなくても、地域を選択して分析メニューを設定することで、データを比較的簡単に確認できる点にあります。現在はID登録などの事前手続きが不要で、すべてのメニューを無料で利用できるほか、2026年にも機能追加やデータ更新が行われており、地域経済をデータに基づいて考えるための実用的な環境として発展しています。
RESASとは何か
RESASは「地域経済分析システム」の略称で、読み方は「リーサス」です。経済産業省と内閣官房が2015年から提供しているデータプラットフォームで、地域経済に関する官民のビッグデータを地図やグラフによって可視化することを目的としています。
地域の経済状況を理解しようとすると、人口統計、事業所統計、観光統計、産業統計、消費関連データなど、複数の資料を別々に調べる必要があります。RESASでは、こうした複数分野のデータを分析メニューとして整理しているため、「人口が減っているのか」「どの産業が地域経済を支えているのか」「観光客はどこから来ているのか」「地域内で所得が循環しているのか」といった問いを一つずつ確認できます。
RESASの基本的な考え方
RESASが重視しているのは、単純にデータを見ることではありません。
例えば、ある自治体の人口が減少しているという数字だけでは、地域の問題を十分に理解できません。
次のように複数の視点を組み合わせることが重要です。
- 人口はどの年齢層で減少しているのか
- 若者の転出が多いのか
- 地域の主要産業は何か
- 産業の付加価値額は増えているのか
- 地域外から所得を稼いでいる産業は何か
- 観光客はどの程度来訪しているのか
- 地域内で消費がどの程度行われているのか
- 将来的に人口や事業所の立地がどう変化するのか
このようにデータを関連付けることで、「現状把握」から「原因の検討」、さらに「政策や事業の方向性の検討」へと分析を進めることができます。
RESASで分析できる主な分野
RESASには複数の分析マップが用意されています。公式サイトでは、現在、マーケティング、観光、人口、産業構造、地域経済循環、農林業漁業、医療・介護などの分野が整理されています。
| 分野 | 主な分析内容 | 活用例 |
|---|---|---|
| マーケティング | 消費、人口、事業所立地など | 商圏分析、新規出店 |
| 観光 | 観光地、宿泊、観光消費など | 観光戦略 |
| 人口 | 人口構成、人口増減、将来人口など | 人口政策 |
| 産業構造 | 産業構成、売上高、付加価値額など | 産業政策・経営分析 |
| 地域経済循環 | 生産、分配、支出など | 地域経済構造の把握 |
| 農林業漁業 | 農林水産業の経営体など | 一次産業政策 |
| 医療・介護 | 医療・介護の需給など | 地域福祉・医療政策 |
人口マップで地域の人口構造を把握する
人口マップは、地域の人口について考える際の基本的な分析領域です。
公式の人口構成分析では、都道府県や市区町村を選択し、ヒートマップ、人口推移、人口ピラミッドなどから人口構造を確認できます。データには総務省の人口推計や国勢調査、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」などが利用されています。
人口構成分析で確認できること
代表的な確認項目には次のようなものがあります。
- 総人口の推移
- 年齢別人口
- 男女別人口
- 人口ピラミッド
- 自然増減
- 社会増減
- 将来人口
- 地域ごとの人口分布
人口減少地域を分析する場合、総人口だけを見るのではなく、年齢構成や転入・転出などを組み合わせることが重要です。
例えば、総人口が減少している自治体でも、高齢者人口が比較的安定している一方で、若年層が大きく減少している場合があります。この場合、地域の課題は単なる「人口減少」ではなく、「若年人口の流出」や「就業機会との関係」にある可能性があります。
将来人口メッシュ分析
地域の人口をより細かな単位で見る場合には、将来人口メッシュ分析が役立ちます。
RESASでは、将来人口をメッシュ単位で表示し、特定地域の人口推移などを確認できる機能が提供されています。また、地域経済総合分析の説明では、将来人口メッシュ分析について、250mメッシュ単位で将来人口を表示したり、指定した地域の事業所情報などと関連付けたりできることが示されています。
これは、自治体全体の人口だけでは分からない「どの地域で人口が減るのか」を考える際に重要です。
例えば、
- 新しい店舗を出す場所
- 高齢者向けサービスの需要地域
- 医療・介護サービスの配置
- 公共交通の維持
- 商業施設の立地
などを検討する場合、行政区単位よりも細かな人口分布が重要になることがあります。
産業構造マップで地域の稼ぐ力を見る
産業構造マップは、地域経済を理解するうえで非常に重要な分析領域です。
RESASの産業構造分析では、産業構成、全産業の推移、付加価値額の構造分析などを確認できます。現在の画面では、売上高や付加価値額について、大分類・中分類・小分類などの産業分類を使って分析できます。
売上高と付加価値額の違い
地域産業を見る際には、売上高だけではなく付加価値額にも注目する必要があります。
| 指標 | 意味 | 分析上のポイント |
|---|---|---|
| 売上高 | 商品・サービスなどの販売によって得られる金額 | 市場規模を考える材料 |
| 付加価値額 | 生産活動によって新たに生み出された価値 | 地域の稼ぐ力を考える材料 |
| 事業所数 | 地域に存在する事業所の数 | 産業集積の把握 |
| 従業者数 | 産業で働く人の規模 | 雇用との関係を分析 |
例えば売上高が大きな産業であっても、地域外から多くの原材料やサービスを購入している場合、売上のすべてが地域内に残るとは限りません。
そのため、産業構造と地域経済循環を組み合わせて見ることが大切です。
地域経済循環マップとは
地域経済循環マップは、「地域で生み出された所得が、どのように地域内を循環しているのか」を考えるための分析領域です。
公式サイトでは、地域経済循環分析に加えて、生産分析、分配分析、支出分析、影響力感応度分析などが用意されています。
地域経済は、単純に「企業が売上を上げる」というだけでは成り立ちません。
概念的には、
生産 → 所得の分配 → 消費・投資などの支出 → 次の生産
という循環があります。
この循環が地域内でどの程度成立しているのかを見ることによって、地域経済の特徴をより立体的に理解できます。
地域経済循環を考えるポイント
例えば、ある地域に観光客が多く訪れていても、観光客の消費が地域外の企業や事業者に流れている場合、観光客数の多さだけでは地域経済への効果を判断できません。
反対に、宿泊、飲食、小売、交通、レジャーなど複数の地域事業者に消費が広がれば、観光による経済波及を地域内に残しやすくなります。
このため、観光分析と地域経済循環分析を組み合わせることが重要になります。
観光マップの活用
観光マップでは、観光地、宿泊、国内観光消費、インバウンド消費、クレジットカード関連の消費分析など、観光に関係する複数のメニューを利用できます。
観光政策では、「観光客を増やすこと」だけを目標にすると、実際の地域経済効果を十分に把握できない場合があります。
そこで、次のような指標を組み合わせて考える必要があります。
- 観光客数
- 宿泊者数
- 来訪者の居住地域
- 観光消費
- 消費単価
- 滞在時間
- 観光地周辺の事業所
- 地域内での消費先
RESASでは、観光地情報、事業所情報、滞留人口などを組み合わせて表示できる観光地分析も提供されています。
マーケティングマップの活用
地域の商業活動や店舗出店を考える場合、マーケティングマップも重要です。
RESASには、生活用品消費分析、生産・消費地分析、滞留人口メッシュ分析、通過人口メッシュ分析、事業所立地分析、将来人口メッシュ分析などがあります。
商圏分析への活用
例えば、新店舗を出店する場合には、
- 現在の人口
- 将来人口
- 年齢構成
- 周辺事業所
- 滞留人口
- 通過人口
- 消費関連データ
などを組み合わせることで、単純な人口規模だけでは分からない地域特性を把握できます。
特に「住んでいる人」と「昼間に滞在している人」が異なる地域では、住民人口だけを基準に商圏を判断すると、実際の需要を見誤る可能性があります。
地域経済総合分析の特徴
2026年には、RESASに「地域経済総合分析」が追加されています。
この分析では、地域の基幹産業、生活関連産業、小規模事業者、人口増減、域外との関係などを一つの分析シートで確認できるようになっています。
地域経済総合分析では、例えば次のような情報をまとめて確認できます。
| 分析領域 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 基幹産業 | 事業所数、従業者数、付加価値額 |
| 地域で所得を稼ぐ業種 | 付加価値額の上位業種 |
| 域外との関係 | 移輸出入収支額など |
| 製造業 | 製造品出荷額等 |
| 生活関連産業 | 地域生活を支える業種 |
| 小規模事業者 | 小規模事業者の状況 |
| 人口 | 将来人口・人口構成 |
| 観光 | 入込客数、消費、宿泊など |
これによって、個別のグラフを一つずつ確認するだけでなく、地域経済の全体像を短時間で把握することが可能になります。
2026年のRESASアップデート
RESASは固定された統計サイトではなく、継続的に機能が更新されています。
2026年1月には「地域ビジネス環境分析」が追加され、データ更新や地図機能の利便性向上などが実施されました。
さらに2026年6月には、
- クレジットカード消費地分析
- クレジットカード消費額分析
- 地域経済総合分析
などが新たに追加され、利用環境も改善されています。
このような更新によって、人口や産業だけではなく、地域の消費行動やビジネス環境まで含めて分析しやすくなっています。
地域ビジネス環境分析とは
地域ビジネス環境分析は、地域で事業を行う際の環境を考えるための分析機能です。
公式の分析シートでは、将来人口の増減、業種別の事業所数・従業者数、地域住民の消費状況などを確認する構成になっています。
例えば、新規出店を考える場合、
将来人口 → 地域の事業所 → 住民の消費
という順番で確認すると、需要と競争環境を考えやすくなります。
中小企業の経営分析にも活用できる
RESASは自治体だけのシステムではありません。
企業にとっても、地域市場や業界環境を理解するための情報源になります。
公式サイトでは、経営環境分析や中小企業経営分析などのメニューが用意されています。経営環境分析では、業界の付加価値額の規模や動向などを確認し、経営戦略を考える際の材料として利用できます。
企業が利用する場合には、例えば次のような問いを設定できます。
- 自社が属する産業は地域で成長しているか
- 同じ地域に競合事業所がどの程度存在するか
- 地域の人口構成は将来的にどう変わるか
- ターゲット顧客はどこに集中しているか
- 地域の消費需要はどの程度あるか
- 新規出店の候補地域はどこか
- 地域外から所得を稼いでいる産業は何か
このように、RESASは経営判断のための「市場環境を調べる入口」として活用できます。
RESASを使った地域分析の基本的な流れ
RESASを効果的に利用するには、最初から大量のデータを集めるのではなく、分析したいテーマを明確にすることが重要です。
1.分析テーマを決める
最初に、
「何を知りたいのか」
を明確にします。
例えば、
- 地域の人口減少の原因を調べる
- 地域産業の強みを探す
- 観光産業の経済効果を調べる
- 新規店舗の候補地を比較する
- 地域の将来ビジネス環境を考える
などです。
2.人口を見る
次に人口構成を確認します。
総人口だけでなく、
- 年齢
- 性別
- 人口推移
- 自然増減
- 社会増減
- 将来人口
などを確認します。
3.産業を見る
人口だけでは地域経済を説明できないため、産業構造を確認します。
特に、
- 事業所数
- 従業者数
- 売上高
- 付加価値額
- 産業別構成
などを比較します。
4.地域経済循環を見る
その地域がどこで所得を生み、どこへ所得が流れているのかを考えます。
この段階で、生産、分配、支出を関連付けると、地域経済の構造がより明確になります。
5.観光・消費・人流を見る
地域によっては観光や商業が重要な経済要素になります。
そのため、
- 観光客
- 宿泊者
- 滞留人口
- 通過人口
- 消費
などを追加して分析します。
6.複数データから仮説を作る
最後に、「なぜこの地域ではこの現象が起きているのか」という仮説を作ります。
RESASの公式サイトが掲げる「仮説を根拠へ」という考え方のように、データを単に眺めるだけではなく、仮説をデータによって確認していくことが重要です。
RESASを利用するメリット
RESASには、地域分析を効率化する複数のメリットがあります。
無料で利用できる
RESASは無料で利用でき、公式サイトではID登録などの事前手続きも不要とされています。
データを可視化しやすい
表だけの統計資料と比べて、地図やグラフによって地域差を直感的に確認しやすい点も特徴です。
多様な分野を横断できる
人口だけ、産業だけという単独分析ではなく、人口、産業、観光、消費、人流などを関連付けて考えられます。
政策とビジネスの双方に利用できる
自治体の政策立案だけでなく、企業の市場調査や経営戦略、地域事業者の商圏分析などにも応用できます。
RESASを使う際に注意したいこと
便利なシステムであっても、RESASのデータだけですべての意思決定を完結させることは適切ではありません。
データの時点を確認する
分析する際には、データの年度や調査時点を確認する必要があります。
人口データ、産業データ、観光データなどは、それぞれ更新時期が異なる場合があります。
指標の定義を確認する
同じ「人口」や「消費」という言葉でも、対象期間や集計方法が異なる可能性があります。
したがって、画面に表示される出典や注記を確認することが重要です。
相関と因果を混同しない
二つの指標が同時に増減しているからといって、一方がもう一方の原因だとは限りません。
例えば人口減少と店舗数減少が同時に起きていても、人口減少だけが店舗数減少の原因とは限りません。
必要に応じて、RESAS以外の統計、行政資料、現地調査、事業者への聞き取りなどを組み合わせる必要があります。
RESASを活用できる主体
RESASは幅広い利用者を想定できます。
| 利用者 | 主な利用目的 |
|---|---|
| 自治体 | 地域政策・地方創生 |
| 地域企業 | 市場・競合分析 |
| 商工団体 | 地域産業分析 |
| 観光事業者 | 観光客・消費分析 |
| 金融機関 | 地域経済・企業環境分析 |
| 大学・研究機関 | 地域研究 |
| 学校 | データを使った探究学習 |
| 地域住民 | 地域課題の理解 |
特に地方創生では、「地域の課題は何か」を感覚だけで判断するのではなく、人口、産業、消費、観光などの複数データを使って考えることが重要です。
RESASで地域の未来を考える
地域経済分析の目的は、現在の数字を説明することだけではありません。
重要なのは、データから将来の地域を考えることです。
例えば人口減少が予測される地域では、
- どの年齢層が減少するのか
- どの地域で人口が減少するのか
- どの産業が影響を受けるのか
- どのサービスの需要が変化するのか
- どの地域に事業所が集まる可能性があるのか
などを検討できます。
一方、人口が増加する地域では、
- 住宅需要
- 商業需要
- 医療需要
- 教育需要
- 交通需要
- 新規雇用
などがどのように変化するかを考えることができます。
つまり、RESASは「過去を説明するための統計ツール」だけではなく、「未来の地域戦略を考えるためのデータ基盤」としても利用できます。
まとめ
まとめ:RESAS 地域 経済 分析 システムは、人口、産業、観光、消費、地域経済循環、人流、農林水産業、医療・介護などの幅広い情報を可視化し、地域の現状と将来をデータから考えるための政府のデータプラットフォームです。無料かつ事前のID登録なしで利用できることに加え、2026年には地域経済総合分析やクレジットカード消費関連分析、地域ビジネス環境分析などの機能が拡充され、地域政策だけでなく企業経営や商圏分析、観光戦略、研究・教育にも活用しやすくなっています。 RESASを活用する際には、一つの数字だけで結論を出すのではなく、人口・産業・所得・消費・観光・人流などを相互に関連付け、データの出典や年度、指標の定義を確認しながら仮説を検証していくことが重要です。