クマ 外傷 の 4 例 : 頭部顔面・四肢咬創・治療経過

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クマ 外傷 の 4 例について理解することは、近年増加する熊との遭遇による被害に備える上で非常に重要です。里山の荒廃や異常気象の影響により、日本各地でツキノワグマやヒグマの目撃件数が増加し、それに伴い人身被害も報告されています。本稿では、過去2年間に高山赤十字病院で経験したクマ 外傷 の 4 例を中心に、各症例の特徴や初期治療の注意点について詳細に解説します。

特に、頭部顔面への損傷が多く、顔面軟部組織、眼球、鼻涙管、耳下腺管、顔面神経などの損傷が含まれるケースがあり、専門的な形成外科的知識と多科連携の重要性が際立ちます。また、咬創や前肢による打撃による外傷は、感染症予防や破傷風対策も必須であることが確認されています。これにより、医療現場における実践的知識を深めることができます。


1. 症例1:66歳男性の重篤外傷

1.1 発生状況

  • 場所:乗鞍バスターミナル
  • 熊の種類:ツキノワグマ、雄、体長1.3m
  • 被害状況:観光客10名が襲われる
  • 受傷者:66歳男性、転倒により顔面を前肢で打撃、左前腕を咬まれる

1.2 来院時の症状

項目数値/状況
血圧160/64 mmHg
脈拍84/min
体温37.6℃
意識Glasgow coma scale 14点
外傷部位顔面(右前額部〜眼瞼、頬〜口唇)、左前腕(咬創3箇所)
特記事項右眼球脱出、歯牙破折

1.3 治療と経過

  • 手術科の連携:脳神経外科、眼科、耳鼻科、口腔外科、整形外科
  • 手術内容
    • 前額部骨折 → チタンプレートで固定
    • 右眼球摘出
    • 顔面軟部組織縫合
    • 抜歯(右上3,4、左上1)
    • 前腕筋断端のデブリードマン、ギプス固定
  • 感染対策:破傷風トキソイド、抗破傷風免疫グロブリン、セファゾリン4g/6日間
  • 経過:頭部顔面は感染なく回復、前腕部は肉芽形成に時間を要し、27病日で転院

2. 症例2:46歳男性の中等度外傷

2.1 発生状況

  • イノシシ採りの罠にかかったクマを逃がそうとして襲撃
  • 受傷部位:頭部顔面の挫創、右前腕・右大腿の咬創

2.2 来院時の症状

項目数値/状況
血圧105/78 mmHg
脈拍78/min
体温36.9℃
意識清明
外傷部位頭部顔面挫創、多数咬創

2.3 治療と経過

  • 手術科の連携:脳神経外科、耳鼻科、整形外科
  • 手術内容
    • 頭部顔面創の二層縫合
    • 右前腕・大腿部の創洗浄と縫合またはペンローズ留置
  • 感染対策:破傷風トキソイド、抗破傷風免疫グロブリン、セファゾリン2g/4日間
  • 経過:頭部顔面は感染なし、前腕・大腿部は外来で洗浄継続し上皮化

3. 症例3:59歳男性の軽症外傷

3.1 発生状況

  • 川で釣り中にクマ襲撃
  • 受傷部位:後頭部咬創、右肩・左上腕咬創

3.2 来院時の症状

項目数値/状況
血圧108/71 mmHg
脈拍87/min
意識清明
外傷部位後頭部咬創(皮下で交通)、右肩・左上腕咬創

3.3 治療と経過

  • 創部洗浄後、後頭部のみ縫合、四肢は軟膏塗布
  • 感染対策:破傷風トキソイド、抗破傷風免疫グロブリン、セファゾリン2g/5日間
  • 経過:頭部創は感染なし、四肢も上皮化

4. 症例4:56歳女性の中等度外傷

4.1 発生状況

  • 沢登り中、茂みから飛び出したクマに襲撃
  • 受傷部位:左顔面挫創、頸部咬創、右大腿部咬創(筋膜露出)

4.2 来院時の症状

項目数値/状況
血圧143/76 mmHg
脈拍75/min
体温36.7℃
意識清明
外傷部位左顔面、頸部、右大腿部(2箇所咬創)

4.3 治療と経過

  • 創部洗浄後縫合
  • 感染対策:破傷風トキソイド、抗破傷風免疫グロブリン、セファゾリン1g投与
  • 外来通院にてセフジニル内服指示、創感染なし

5. クマ外傷の特徴と治療ポイント

5.1 攻撃パターン

  • 頭部顔面が標的
  • 前肢での殴打や咬創による広範囲軟部組織損傷
  • 致命傷は少なく、縫合可能な場合が多い

5.2 多科連携の重要性

  • 複数科(脳神経外科、眼科、耳鼻科、口腔外科、整形外科)による合同治療が必要な場合あり
  • 顔面軟部組織、眼球、顔面神経の損傷は注意深く確認

5.3 感染予防

  • 創部の十分な洗浄
  • 抗菌薬(セファゾリン)、破傷風トキソイド・免疫グロブリン投与
  • 四肢の創部は治癒に時間を要する場合あり

6. クマ外傷の治療における注意点(リスト形式)

  • 創部の洗浄:土や草木による汚染除去
  • 咬創の深さ確認:表面だけでなく皮下交通を評価
  • 顔面軟部組織損傷:眼球、涙小管、顔面神経などを慎重に観察
  • 感染予防:抗菌薬投与と破傷風対策
  • 四肢外傷:大きな創はデブリードマンとドレーン留置
  • 多科連携:必要に応じて形成外科、眼科、耳鼻科、口腔外科と合同治療

7. クマ外傷症例の比較表

症例年齢・性別主な外傷部位治療科感染対策経過
166歳・男性顔面、前腕脳神経外科・眼科・耳鼻科・口腔外科・整形外科セファゾリン4g、破傷風対策頭部感染なし、前腕は肉芽形成遅延、27病日で転院
246歳・男性頭部顔面、前腕、大腿脳神経外科・耳鼻科・整形外科セファゾリン2g、破傷風対策頭部顔面感染なし、前腕・大腿は外来で上皮化
359歳・男性後頭部、肩、上腕救急外来セファゾリン2g、破傷風対策全創感染なし、上皮化確認済
456歳・女性顔面、頸部、大腿救急外来セファゾリン1g、破傷風対策外来通院で創感染なし

まとめ:クマ 外傷 の 4 例

クマ 外傷 の 4 例を通して、頭部顔面への損傷が最も多く、前肢の打撃や咬創による広範囲軟部組織損傷が見られることが明らかになりました。治療にあたっては創部の洗浄、抗菌薬・破傷風対策、多科連携による手術が重要です。また、四肢の創は治癒に時間がかかるため、経過観察と外来でのケアも欠かせません。これらの症例は、今後の熊被害対応における臨床指針として非常に参考となります。

クマ 外傷 の 4 例の理解を深めることで、救急医療現場での迅速かつ的確な判断と治療が可能となります。