「自動詞」と「他動詞」の違い は、日本語学習者にとって非常に重要かつ混乱しやすいテーマです。この記事では、「自動詞」と「他動詞」の違いを徹底的に解説し、見分け方のポイントや具体的な例文、さらには動詞同士の対応関係まで詳しく紹介します。
1. 「自動詞」と「他動詞」とは?
日本語の動詞は様々な分類がありますが、「自動詞」と「他動詞」の違いは、動詞の使い方や文中での役割に関わる基本的な区別です。
- 自動詞(じどうし):動作や状態が主語自身で完結し、補語(対象)を必要としない動詞。
- 他動詞(たどうし):動作が主語から補語(対象)に働きかけられ、補語を必要とする動詞。
2. 自動詞・他動詞の見分け方の誤解と正しい方法
2.1 よくある間違った見分け方
「~を」を取る動詞は他動詞、「~を」を取らない動詞は自動詞、という覚え方があります。しかし、これは間違いです。
- 例:
- 時計を壊した。(「壊す」は他動詞)
- トンネルを抜ける。(「抜ける」は自動詞)
- 犬が子どもに噛みついた。(「かみつく」は他動詞)
このように「~を」をとるかどうかだけで判断すると、多くの例外が存在し、正しく分類できません。
2.2 正しい見分け方:補語(対象)の有無に注目する
補語として働きかけられる対象をとるのが他動詞で、とらないのが自動詞が正しい見分け方です。
3. 補語と対象の理解
3.1 補語とは?
補語とは述語(動詞)が必須で要求する成分のうち、主語以外の要素です。
- 例:
- 私は図書館に行った。
→ 動詞「行く」には「図書館に」という補語が必要。 - AさんがBさんに手紙を送った。
→ 動詞「送る」には「Bさんに」「手紙を」が補語。
- 私は図書館に行った。
3.2 対象とは?
対象は、述語が表す動きや認識などに対し、その影響を受けるもの・認識が向けられるものです。対象を表す格助詞には以下があります。
| 格助詞 | 役割 |
|---|---|
| を | 動作の対象を示す |
| が | 主語または対象になる場合もある |
| に | 動作の対象や着点を示す |
| に対して | 対象への働きかけを表す |
| について | 対象への認識や関心を表す |
4. 自動詞・他動詞を見分ける練習問題と解説
動詞が自動詞か他動詞か見分けるためのステップは次の通りです。
見分け方のステップ
- その動詞の補語は何か?
- その補語は働きかけられる対象か?
対象であれば他動詞、対象でなければ自動詞となります。
4.1 練習問題①
私は毎朝リビングでコーヒーを飲む。
- 動詞:「飲む」
- 補語:「コーヒーを」 → 対象
- 結論:「飲む」は他動詞
4.2 練習問題②
鳥たちが雨の中必死に飛んでいる。
- 動詞:「飛ぶ」
- 補語:なし
- 結論:「飛ぶ」は自動詞
4.3 練習問題③
中学生の頃は先輩にあこがれていた。
- 動詞:「あこがれる」
- 補語:「先輩に」 → 対象
- 結論:「あこがれる」は他動詞
4.4 練習問題④
車がトンネルを抜けた。
- 動詞:「抜ける」
- 補語:「トンネルを」 → 対象ではない(経過域)
- 結論:「抜ける」は自動詞
4.5 練習問題⑤
21時に駅に到着した。
- 動詞:「到着する」
- 補語:「駅に」 → 対象ではない(着点)
- 結論:「到着する」は自動詞
5. 自動詞と他動詞の対応関係
5.1 有対自動詞・有対他動詞
形態的にペアになっている自動詞と他動詞を「有対自動詞」「有対他動詞」と呼びます。
| 他動詞 | 自動詞 | 例文(他動詞) | 例文(自動詞) |
|---|---|---|---|
| 壊す | 壊れる | 時計を壊した。 | 時計が壊れた。 |
| 折る | 折れる | 木を折った。 | 木が折れた。 |
| 入れる | 入る | 水を入れた。 | 水が入った。 |
| 移す | 移る | 椅子を移した。 | 椅子が移った。 |
| 止める | 止まる | 車を止めた。 | 車が止まった。 |
5.2 無対自動詞・無対他動詞
すべての動詞に自動詞と他動詞のペアがあるわけではありません。
| 種類 | 例 | 説明 |
|---|---|---|
| 無対自動詞 | 雨が降る、凍る、光る、走る | 他動詞のペアなし。自然現象や自己完結動作。 |
| 無対他動詞 | 読む、見る、話す、楽しむ | 自動詞のペアなし。他者への働きかけを表す。 |
5.3 自他同形の動詞
自動詞・他動詞が同じ形の動詞も存在します。
- 例:
- 話が終わった。(自動詞)
- 話を終えた。(他動詞)
「開く」には注意が必要で、
「あく」(自動詞)-「あける」(他動詞)というペアもあれば、
「ひらく」(自他同形)という例もあります。
6. 意味的対応のある自動詞・他動詞ペア
形態的に対応がなくても意味的にペアになることもあります。
| 自動詞 | 他動詞 | 例文(自動詞) | 例文(他動詞) |
|---|---|---|---|
| なる | する | Aさんがチームリーダーになった。 | 課長がAさんをチームリーダーにした。 |
| 死ぬ | 殺す | 豚が死んだ。 | 人が豚を殺した。 |
| できる | 作る | 夕食ができた。 | 夕食を作った。 |
この記事では、「自動詞」と「他動詞」の違いについて、誤解されやすいポイントや正しい見分け方、具体例や対応関係まで詳しく解説しました。
- 自動詞は補語(対象)を必要とせず、動作や状態が主語自身で完結する動詞。
- 他動詞は補語(対象)を取り、その対象に働きかける動詞。
- 「~を」だけで判断できない例外も多いため、補語と対象の理解が重要。
- 有対自動詞・有対他動詞、無対動詞、自他同形動詞など、多様なパターンがある。
日本語の動詞の理解を深めるうえで、ぜひ今回のポイントを参考にしてください。