「いたします」「致します」違いは、ビジネス文書やメールで最も迷いやすい表記のひとつです。どちらも「いたします」と読み、「する」の謙譲語として同じ意味を表します。本記事では意味、表記、敬語、使い分けの基準を整理し、迷わず書ける判断軸を解説します。
「いたします」「致します」の違い比較
| 項目 | いたします | 致します |
|---|---|---|
| 読み | いたします | いたします |
| 基本の意味 | 「する」の謙譲語(へりくだって行う) | 同左(意味の差はない) |
| 元の語 | 動詞「いたす」+丁寧語「ます」 | 動詞「致す」+丁寧語「ます」 |
| 常用漢字 | ひらがな表記(漢字を使わない) | 「致」は常用漢字で、「いたす」は表内訓 |
| 公用文での扱い | 補助動詞はひらがなが原則 | 本動詞として使う場合は漢字も可 |
| 使われやすい場面 | 「お願いいたします」「失礼いたします」 | 「死に致す」「事を致す」など本動詞的な用法や、改まった文書 |
| 印象 | 柔らかく読みやすい | やや硬く、重々しい |
| 例文 | ご連絡いたします。/ お願いいたします。 | 手紙で御礼を申し上げ致します。(古風) |
表の解説
まず、意味と敬語としての働きに違いはありません。どちらも「する」をへりくだって言う謙譲語で、「ご連絡いたします」「お待ちいたします」のように、相手への敬意を示す場面で使います。差があるのは表記の選び方だけです。
判断の軸は、「いたす」が補助動詞か本動詞かという点です。「お願いいたします」「ご案内いたします」のように、「お(ご)~する」の形で動作を丁寧に表す補助的な使い方では、公用文の慣例でひらがなが基本となります。現在のビジネスメールでも、この形では「いたします」が圧倒的に主流です。
一方、「致す」と漢字で書くのは、「する」の意味の本動詞として使う場合や、「力を致す」「思いを致す」のように「届かせる・及ぼす」の意味を持つ場合です。ただし、現代では「致します」と書くと硬く古風な印象になり、読みづらさを感じる人もいます。手紙の定型句や、格式を重んじる文書では見られますが、日常的なビジネスメールではあまり使われません。
また、「致」は「致命的」「一致」「招致」など多くの熟語に使われる常用漢字ですが、敬語の「いたします」では、ひらがなのほうが柔らかく、丁寧な印象を与えやすいという面があります。
使い分けの目安は次のとおりです。メール、ビジネス文書、案内文など、あらゆる一般的な場面では「いたします」とひらがなで書くのが最も安全です。格式ばった文書や古風な文体を意図する場合に限り、「致します」も選択肢になります。
注意点として、「致します」は誤字ではありませんが、使う場面を選びます。また、「いたします」は「お願いいたします」のように、すでに「お願い」という謙譲の語と組み合わさることで、二重敬語に近く感じられる場合もありますが、慣用として広く認められています。同じ文書内では表記を統一しましょう。
まとめ:迷ったらひらがなの「いたします」
「いたします」「致します」は、意味も敬語としての働きも同じで、違いは表記の選び方にあります。補助動詞として使う場合はひらがなが標準で、ビジネスでもほぼすべての場面で通用します。「致します」は誤りではないものの、硬く古風な印象を与えるため、使う場面は限られます。迷ったら「いたします」とひらがなで書き、文書全体で表記を統一すれば、読み手に違和感を与えない丁寧な文章になります。